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老人ホーム豆知識

介護保険制度とは?

介護保険

高齢化が進む日本では介護を必要とする高齢者が増えています。介護をするには介護ヘルパーや介護施設の利用、介護用品の準備などの費用が必要であり、その介護費用の負担を軽減するために「介護保険制度」が制定されました。この章では介護保険制度の仕組みや内容、利用方法についてご紹介していきます。

介護保険制度の概要

介護保険は介護の必要な方が適切な介護サービスを受けられるよう社会全体で支援する保険制度です。1997年(平成9年)12月に介護保険法が制定、2000年(平成12年)4月1日に施行されました。

介護保険の保険者は市区町村であり、被保険者から保険料を集めて保険を運営します。被保険者は40歳以上の国民全員です。40歳になった月から介護保険に加入し、保険料を支払うこととなります。たとえ、介護サービスを受けられる高齢になったとしても、死亡するまで保険料を払い続けなくてはなりません。

介護保険制度の仕組み

介護保険料は保険料の他に公費(税金)を財源として運営しています。保険料と公費の割合はそれぞれ50%ずつです。公費の内訳は国25%、都道府県12.5%、市区町村12.5%となっています。

介護サービス業者は介護サービスにかかった費用のうち1割をサービス利用者(被保険者)に、9割を市区町村に請求します。つまり被保険者は介護サービスを1割の費用負担で受けることが可能です。ただし、前年度の所得によっては自己負担率が2割あるいは3割になります。

介護保険サービスが利用できる人は?

65歳以上の被保険者

65歳以上の被保険者を第一号被保険者といいます。第一号被保険者の保険料の払い込み方法は年金からの天引き、または市からの納入通知書による支払いです。所得に応じて5段階の保険料が設定されており、収入が低いなど生活が困窮している場合は減免されることもあります。なお、保険料の金額は各市町村により基準額が異なります。

第一号被保険者は介護が必要であると認定されれば、理由に関係なく介護サービスを受けることが可能です。老化以外の病気や事故を原因とした介護でも対象になります。

40~64歳で医療保険に加入している被保険者

40~64歳の被保険者は第二号被保険者と呼ばれ、40歳になった月から医療保険料に合わせて介護保険料が請求されます。現役世代が多くを占める第二号被保険者は毎月の給与から年金やほかの保険と同時に天引きされる仕組みです。また、第二号被保険者は医療保険の加入者であることが要件となります。保険料は加入している医療保険ごとに異なるので一概には言えません。

なお、第2号被保険者は加齢に起因する16の特定疾病により介護認定を受けた場合に限りサービスの対象となります。

介護保険で対象となる特定疾病

  • 末期がん
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う)

介護保険で受けられるサービスの概要

在宅による介護サービス

在宅の介護では以下のものが介護保険の対象です。

  • 訪問ヘルパーの依頼
  • 自宅で自立した生活を送れるよう、介護ヘルパーに訪問介護をしてもらうことができます。介護ヘルパーはケアプランに基づいて、食事や排せつ、入浴などの補助を行います。場合によっては掃除や洗濯といった生活援助サービスを受けることもできます。

  • 介護用品を揃える
  • 自宅での介護には介護用品を揃える必要があります。車いすや介護ベッドなどのレンタル、特定福祉用具の購入をした場合に補助が受けられます。また、手すりやスロープの設置などの住宅を改修した場合も補助の対象です。

    介護福祉施設へ通うことで受けることができるサービス

    介護福祉施設へ通うことで受けることができるサービスは主に2種類です。

    • デイサービス(通所介護)
    • 日帰りで施設に通い介護サービスを受けるものです。要介護者に他者とのコミュニケーションの場を提供し、心身機能訓練を行うことで機能維持を図ります。また、家族など介護者の介護負担を軽減させる目的でも利用されます。

    • ショートステイ
    • 連続30日を上限として施設に入所し、日常生活の介護や機能維持の訓練を行う介護サービスです。介護者の体調不慮や多忙により一時的に介護ができなくなった場合に介護を受けられます。家族など介護者の介護負担の軽減目的でも利用されます。

    介護福祉施設への入所で受けられるサービス

    要介護者の状態の悪化や介護者の状況の変化などにより自宅での介護ができなくなった場合、介護福祉施設に入所することがあります。介護保険の対象になる介護福祉施設は以下の3種類です。

    • 特別養護老人ホーム(特養)
    • 入所費が安く設定されているという特徴があります。ただし、日常生活上の介護を受ける施設であり、医療的ケアが必要な場合は入所ができないこともあります。

    • 介護老人保健施設(老健)
    • 治療を終え病状の安定した要介護者が自宅復帰を目指し、リハビリテーションや看護、医療サポートを受ける施設です。あくまでも自宅復帰を目的とした施設のため、長期入所は不可能なケースが多いです。

    • 介護療養型医療施設
    • 長期医療を必要とする要介護者が介護サービスと医療サポートを受けるための施設です。医療面のサービスが充実しているのが特徴で病院内に併設されています。

      介護保険サービスを利用する際の手続き

      介護保険サービスを利用するには要支援・要介護認定が必要です。ここでは、要介護認定までを4つのステップで見ていきましょう。

      申請手続き

      要介護認定は、まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口で申請することから始めます。要介護・要支援認定申請書を市区町村の窓口かインターネットから手に入れ、必要事項を記入しましょう。申請には申請書の他に申請者の身元が確認できるもの、印鑑(申請者が本人または家族以外の場合)が必要です。加えて、第一号被保険者は介護保険被保険者証、第二号被保険者は健康保険被保険者証を用意します。なお、申請手続きは要介護者本人と家族が行いますが、ケアマネージャー、介護保険施設職員の代行も可能です。

      介護認定調査

      要介護・要支援認定申請書を申請した後は介護認定調査が行われます。かかりつけ医による主治医意見書と聞き取り調査により、介護の必要性と必要な介護の度合いが決定されます。聞き取り調査は役所から任命された介護認定調査員が自宅や施設、病院に訪問して、ご本人の日常生活の状況を伺い、身体機能のチェックを行います。

      認定結果の通知

      認定結果は市区町村に申請をしてから30日以内に郵送にて通知されます。認定結果は大きく分けて3種類です。一つ目は介護を必要としない「非該当」、二つ目は「要支援(1~2)」、三つ目は「要介護(1~5)」です。要支援1以上の認定の場合、介護保険制度を利用することができるようになります。

      不服申し立て

      受けられる介護サービスの範囲は認定結果により異なります。そのため、認定結果に納得ができない場合は都道府県の介護保険審査会に不服申し立てができます。ただし、不服の申し立ては認定結果の通知を受け取った日の翌日から60日以内に行う必要があります。

      まとめ

      高齢化や核家族化が進む日本では誰もが要介護者や介護者となり、介護に直面する可能性があります。介護保険は様々なルールや手続き、審査や更新など、初めて利用される方はハードルが高いと思われるかもしれませんが、ご本人やご家族にとって非常に助けとなる制度です。介護保険の利用が必要になった時にスムーズに利用することができるよう、介護保険についての理解を深めておきましょう。

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